その後の彼

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ある日、閉店間際に彼が店に飛び込んで来た。 もう殆ど店じまいも終わって、外の看板も消していた筈だけど、それにも気付かなかったみたいだ。 どうしたんだろう…? 閉店作業が終わっている店内に気付いた彼は、申し訳無さそうに頭を下げる。 彼の顔に疲れた色を見つける。 そんな彼を放っておける筈が無い。 片付け終わった店を再び開けても良かったけれど、それでは彼は心苦しいだろうと思い、ときどき店の帰りに食事がてら飲みに行く道向かいの居酒屋にちょっと強引に彼を連れて入った。 酒が入るにつれ彼の口からは、普段聞いたことの無い愚痴が吐き出される。 話を聞いていると、どうやら今日は仕事でのクレーム対応に手こずっていたようだ。 僕も接客業だから、タチの悪いクレーマーの対応に困った事もあるし彼の気持ちはよく分かる。 その日の彼は、らしくもなく初っ端からペースが早かった。 と言っても一緒に飲むのは初めてだから、普段のペースなんて知らないけれど。 それでも今日の彼の様子を見れば、オーバーペースなのは分かる。 止めた方が良かったのかもしれないが、僕もちょっとした下心があったものだから、わざと止めなかった。 見る見るうちに彼の喋り口調も態度もくだけていく。 彼は話す勢いと同じペースでグラスを開けていき…。 潰れた…。
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