名和さんの話 前編

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「私が就職した頃は、まだ四年生大学の看護科なんて珍しかったのよ。九州にはなかったし、うちの大学の看護師も、付属の医技短(医療技術短期大学)卒の人たちばっかりだったの」 その話は、前に他の人から幾度か聞いた事があった。 名和さんは、東京にあるS大学という、名実ともに日本でトップの四年制の看護大学を出ている。その事で、やっかまれる事も多かったらしい。 「ちょうど、私が就職した前の年に就任した看護部長が、私と同じ大学出身でね。うちの大学は、ずっと付属の医技短卒の人達が看護部長も副看護部長も務めていたから、初めての外部から来たその部長に反発も強かったし、その部長がうちの古い体質を一掃しようと、改革を進めていったものだから、なお反発を強めていったの。その改革の一つが、人事の見直しだった。それまでは、年功序列で付属の医技短卒の人達が派閥みたいになってて、ずっと優遇されてたんだけど、それを改めようって事になってね」 この話もよく耳にする話だった。当時、次期看護部長と言われていてその椅子を奪われた副看護部長と、新看護部長が対立して、その頃院内の看護師達は部長派と副部長派に分かれて、かなり荒れてたらしいと。その頃を知る人達は、口を揃えてあの頃は大変だったと言う。
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