十三夜

名和さんの話 前編

そして、同じ大学出身だったからか、他に理由があったのかわからないが、新看護部長が名和さんに目をかけていて、異例のスピードで副師長へ昇格させたものだから、ちょっとした騒ぎになったらしい。

「50代の副師長がゴロゴロしていた時代に、私は27で副師長に昇格して、副師長として初めて働いたのがCCUだったの。病院始まって以来、初めての20代の副師長に、ただでさえ大卒って事で風当たりが強かったのに、もう台風並みの勢いでCCUの看護師達は当たって来てね、四大出てる看護師はどんなに凄いのかって、揚げ足を取ろうと待ち構えられてたわ」

名和さんは、いつものようにサバサバと、そして少し冗談めかして話してはいたが、以前に聞いた話では、当時名和さんへの風当たりは、相当なものだったらしい。

※CCU
心疾患、循環器系疾患の治療を行う集中治療室。名和さんが働く大学病院では、救命センターの中にあった。