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そんな滑稽な様を曝け出す必要もないのだが、やる気のなさそうなアルバイト店員以外に、今の自分の姿を見ているものは誰もいないとすっかり思い込んでいたのだ。
「紗都さん」
背後から声をかけられて、驚きの余りに再び手に取っていた『よだれ鷄』を、紗都は思わずケースの中に落としてしまった。
恐る恐る振り返ってみると、そこには爽やかなイケメン君が、自分に笑顔を向けている。
クククッと笑った後に、大丈夫ですか?と言った彼は、あっうん。と返した紗都に、「お疲れ様です。いま、帰りですか?」と声を掛けてきた。
「あっ、うん」とワンパターンな返事をしながらも紗都は、厄介な奴に会ってしまったなぁと内心思っていた。
「金澤くんは、買い物?」
「はい。ジム行った帰りなんですけど、夕飯を調達に…。紗都さんも、今からですか?」
「あっ、うん」
「よかったら、食べ行きませんか?」
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