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ゴソゴソと、布団の中でジーンズを履くと、隣の部屋に出て行く。 古い2DKのアパート。 南側に六畳と八畳の和室が二つに、北側にある台所は、ダイニングキッチンと言っても、北側の壁につけられたシンクとコンロの並びに玄関があり、玄関から和室に抜ける通路も兼ねているので、部屋全体の大きさの割には広めの台所という感じだった。 「おはようございます」 この部屋の主人である金澤くんが、寝室から出てきた私に気づいて挨拶をしてくれる。 「おはよう」 私の目の前まで近づいてきた金澤くんは、爽やかに微笑んで私を見つめてくる。 それに反応するように口角が上がった私は、くすぐったいような感覚を胸の中に感じる。 柔らかな表情が、少しだけ切ないような表情に変わったかと思ったら、ゆっくりと、すごくゆっくりと、金澤くんが右手を伸ばしてくる。 それは、恐る恐るといった感じで、私の反応を見ながら、ゆっくりと彼の手のひらが私の頬へと到着した。 その手の冷たさを感じながら、また半歩近づいた金澤くんをゆっくりと見上げると、そこには朝日を浴びた惚れ惚れするような綺麗な顔。少し寝癖のついた無造作な髪だと言うのに、その無防備さが返って色気を感じる。 やっぱり寝起きでもイケメンだなと思うと同時に、自分も寝起きのすっぴんである事を思い出す。 やだっ…… 急に、恥ずかしくなり顔を俯ける。 アラフォー女のすっぴんを曝け出してたかと思うと、切なくなる。こんな彼と不釣合いな自分の顔を見られたくない。 「すみません…嫌でした?」
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