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美味しそうにご飯を頬張る金澤くんを見ながら、ここに来て何度目かの罪悪感を覚えた。
あんな事までしてしまったのに、昨日から金澤くんは、私の気持ちを聞いて来ない。そして、自分の気持ちも伝えて来ない。
多分、私がそれを望んでいる事を察して、そうして来ないんだと思うと、心にズーンと重いものが伸し掛かってくる。
自分のわがままのせいで、きっと金澤くんを傷つけていると思うと、いたたまれなくなる。
しかし、今更謝ってみても、金澤くんの気持ちが軽くなるわけでもなく、自分のしている事に後悔するばかりだ。
「どうかしました?」
きんぴらごぼうの入った小皿を持ったまま、ぼーっとそんな事を考えていた私に金澤くんが声を掛けてくる。
「嫌いですか?」
「ううん、そんな事ないよ……でも」
「でも?」
「こういうのも好きだけど、もう少し田舎くさいのも好きかな」
「田舎くさい?」
「そう。いかにも手作りって感じの、もう少し太くて、こってりしてて、もっと茶色で、艶っぽい感じの」
「あぁ、なんとなくわかります」
「フフッ、塩分高いんだろうけどね。小さい頃、友達のおばあちゃんが作ったのを食べさせてもらったのが美味しくてね。いまでもたまに食べたくなるけど、あんまり似たようなのが売ってなくて……。まっ、自分で作ればいいんだろうけどね」
綺麗に、均等に、細く、機械で切られたごぼうと人参が、上品に味付けされて、ふんわりと皿の上に盛られていて、それを見ながらそんな事を話す。
「うちのも、そんな感じでした」
「おばあちゃんの?」
「いや、うちは母の方で。祖母は薄味でどちらかというと上品な味付けだったから、いつも母の料理を看護婦のくせにって嫌味言ってました」
「なんか耳が痛い」
「ハハッ、そうですね」
「お母さん、よく作ってくれたの? 私なんて、幻の味になってるよ」
「いや……。うち両親が俺が小さい時に離婚して、母親とは別に暮らしてたんで、小さい頃に何度か食べただけなんですよ。だから、同じく幻の味ですよ」
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