Prelude

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「姐さん、おかえりなさい」 強面の男達の、満面の笑みに迎えられ 部屋の中央に置かれた、ふかふかのソファーに腰を下ろす。 "あたし"こと片桐美月(かたぎり みづき)の、最近お気に入りの定位置。 「姐さん。今日はLa maison chouchouの  期間限定・苺のミルフィーユが手に入りやしたぜ」 「やったぁ!」 ここは真柴組西支部の事務所。 【親同士が勝手に決めた】婚約者の真柴涼(ましば りょう)は 真柴組8代目組長及び真柴建設の副社長&ホストクラブ ”紫音”のオーナーを務めている。 最近は建設業が忙しいらしく、残業・休出は当たり前。 家にもまともに帰っていないって噂。 あたしとも音信不通状態・・まぁ仕事じゃ仕方ないけど… と思いつつ、つい西支部の事務所に足を向けてしまう。 真柴の片腕、長瀬徹哉(ながせ てつや)が、どんなに仕事が忙しい時でも ココには週一で顔出しするって、こっそり教えてくれたから。 西支部は総本部と違って、極親しい組員しか詰めていないので 女子高生のあたしでも気軽に足を踏み入れられた。 優しい組員さんに紅茶を淹れてもらって、ミルフィーユを戴く。 う~ん。至福のひと時! 「ところでお嬢さん。この間のテストはどうでしたか?」 窓際のソファーに腰を下ろし、分厚い本の頁を捲っていた(さかき)さんが あたしに尋ねた。 「バッチリよ!榊さんのヤマは全部的中してた。  どうもありがとう」 「いえ・・それは良かった」 真柴組の次期若頭とも目される、榊和磨(さかき かずま)さんは 真柴よりも6つ上の31歳。 時々宿題や勉強を見てくれる。 「榊さん、教え方が上手よね。学校の先生より分かり易いもの」 あたしがそう言うと、紅茶を淹れ終え、電話番をしていた三沢さんが 「そりゃぁ、兄貴は俺らと違って超エリートっスからね」 「エリート…?」 「何しろ赤い門で有名な国立大学出身・・」 「栄治(えいじ)!余計な事言うな」 榊さんに一喝され三沢さんはあわてて口を噤む。 赤・・門? 有名な国立大学って…え・・えぇ!?
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