神崎湊

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10月26日午後23時30分。俺は人を殺した。血の繋がっている親父を。けど、俺から母さんを奪ったんだ。今更、罪悪感など感じない。すると突然、足に違和感、そして痛みを感じた。見ると、殺したはずの親父が俺の足を強く掴んでいた。 「う…うぅ……湊…てめぇ…」 気持ち悪い…気持ち悪い……!触るんじゃねぇ…! 「離せよ、クソ親父!」 俺は血まみれの親父の手をどかし、踏みつけた。 「あがぁぁぁぁぁっ!!」 「うるせぇ、静かにしろ。」 しばらくはうるさかったが、気づいた時にはもう、完全に死んでいた。 「やっと静かになった。」 服は、親父の血飛沫で汚れていた。台所の周りには、親父のぐちゃぐちゃの死体。リビングには、親父に殺された母さんの死体。…もう、この家に平和は訪れない。 数時間前 「湊、あなたの服を買おうと思うんだけど、どれがいい?」 母さんはメンズの雑誌を見ていた。 「母さんに任せるよ。センスいいから。」 「あらっ!息子にそんなこと言われるなんて嬉しいわぁ。」 この時はまだ幸せな家庭だった。でも、それが一気に崩れるなんて、この時の俺は全然想像していなかった。 「そういえば、湊。この間、中間テスト全部返ってきたんでしょう?母さんに見せなさい。」 「…うん。」 自分の部屋に行き、テストを持って母さんのいるリビングに戻った。 「はい。」 テストを母さんに渡し、母さんは表情が険しくなった。 「湊、あなた学力落ちたわね。学年一位をキープしていても、この成績じゃ私立美波大学附属高校に進学出来ないわよ?あそこは、偏差値の高い高校なんだから、もっと努力しなきゃ。」 「…ごめんなさい。」 「まぁ、いいわ。あなたは努力する子だって信じてるもの。勉強をさぼっていないだけいいわ。次からまた頑張るのよ。」 「…うん。」 やっぱり、母さんは優しい。その母さんの優しさが俺は大好きだった。けど、深夜11時15分。物音と女性の悲鳴が聞こえて、俺は目を覚ました。うるさいな…。階段をゆっくり下りる。音はリビングから聞こえた。どうせ、親父がAVでも見てるんだろ…こんな深夜にいい迷惑。リビングのドアをゆっくり音を立てずに開ける。そして、俺は衝撃を受けた。リビングに、包丁を持った親父と、床に血まみれで倒れている母さんがいた。親父の持っていた包丁は血で真っ赤に染まっていた。
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