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「ああ、ライアン」
なんてことだろうか。本来ならば、女王を憎むべきだと分かっているのに、ライアンへの憎しみが増えてしまう。相対的な悪である女王ダリアと、絶対的な善であるはずの勇者ライアン。
ライアンが、憎くてたまらない。僕は勇者に憧れていた。勇者はライアンだった。僕は、段々と勇者信仰の傾倒して、ライアンを独り占めにしようとした。この国に定住しろと願った。
その結果、僕の祖国は滅んだ。
幼かった僕が悪いのか。いや、勇者は僕ら人間とこの国を見捨てたんだ。
「所詮、人殺しは人殺しにすぎない……か」
勇者ライアンは、魔獣を駆逐する一方で戦士として戦場に立つことを好んだ。そうすれば、一騎当千は必至。行く先々で、死を撒き散らしたという。
歴代の勇者は魔獣しか駆逐しない。それ対して、ライアンは逸脱していた。やや血生臭い男で、獣のようだと揶揄する者達もいた。当時の僕はそれを信じることはなかったし、ライアンは立派だと反論したものだった。
しかし、この国の姿をみればわかる。地面は血に染まり、魔獣が闊歩し、棲みかとなっている。
「おのれ……ライアン」
勇者なぞ、死んでしまえ。死ね、ライアン。
生きるよりも辛いことを、絶対に教えてやる……。
僕は旅をする目的を定めた。それは、勇者殺しをするという、決意。
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