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1.彩石の国
太陽の光が容赦なく照り続ける大地。
草や生物さえ生きられない過酷な場所。
ここは灼熱の砂漠の外れ。
砂・砂・・砂・・。
うんざりするほどの同じ景色が地平の彼方まで続く。
それを見ながらまた何度目かの溜息をつく。
飛行板。
通称ボード。
私たちが一般的に移動手段に使う物である。
これは一枚の板と風の力、そしてそれを引きだす石の力で動くもの。
黄色い砂の中を一つの琥珀石の橙色が駆け抜けていく。
もうすこし!
もうすこしだ!!
その後ろで凄い勢いで追いつこうとしている幾つかの影。
同じくしてボードに乗った人影が見える。
ボードが風を切るキーンとした高い音だけが耳に聞こえる。
そしてやっと遥か前方に、灰色の巨大な石の壁が見えてきた。
それを確認した男は安堵の顔を見せた。
風になびく少し後ろに長い髪。
力強い瞳を宿す顔。
瞳は目前に迫ってきた石の壁を見て笑顔を見せた。
自分の物ではない、風を切るボードの音が近づいた。
ようやく追いついた人たち。
横に平行して移動しながら並ぶ。
大きな男が叫ぶ。
「ワイズ。いくらラズに早く渡したいからってスピードの出し過ぎだ。」
必死で追いついて来た人たちからは、疲労の色が見えた。
自分よりも一回りも大きな身体。
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