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「とっ、とにかくっ!!僕はお前を許さないからっ!!」
「あぅ……」
ぐすぐすと鼻を鳴らしながらびしりと指をこちらに指す目の前の可愛い男の人。
「なんで!お前なんかが爽乃様と話せるんだよ!僕はっ…!全然話してもらえないのにっ!ずるいんだよぉ…!一年の時からずっと好きだもん!僕の方が爽乃様のこと好きだもん…!!」
うわーん…!!と大きな声で泣き出してしまった彼にわたわたと焦ってしまう。
びぇ?!
ど、どうしましょう…!!
泣かせちゃった…!!
とにかく、慰めなきゃ…!とパタパタ音をたてながら近づき、背中を撫でる。
「何してんの……?」
「ぇ、う……慰めなきゃって思って……ぼ、僕のせいだから…?」
「意味わかんない…。僕は君のこと捕まえて酷いことしようとしてるのに…」
「で、でも……。ぁ、あなたは本当はしたくないのかな、って……」
「は…?」
膝に埋めていた顔があがり、パチリと大きく見開かれた目と目があう。
「だって…、逃げようと思えば逃げることがで、できるじゃないですか…。拘束してないし…。ぇと、本当は…優しい人ですよね…?」
「っ…!」
さらに大きく見開かれた瞳がうるうると涙を滲ませる。
「爽乃様に嫌われてるもん……。だから、今さらいい子でいたって、好きになってもらえないもん……。それに、爽乃様は…本当は騒がれるのが好きじゃないから……」
だったら…爽乃様に近づく奴は減らさなきゃ…って。爽乃様には迷惑かけないようにしなきゃって……。そうしたら…もっと嫌われちゃって…ぅ……爽乃様の役に立ちたかっただけだもん……
か細い声が体育倉庫に溶け込む。
この人は…本当に爽乃先輩が好きなんだなぁ……
「爽乃様が、君に夢中になってるって聞いて……ずるいって思って……あの日、痛い目見せようと思ったけど…無理で…。けど、爽乃様が本気だって…分かったから……もう、なにもしないつもりだった……」
「けど………、あいつに誘われて……っ…、ごめ、なさい……」
土下座をして見せた先輩の肩を思わず掴み、起こそうとする。
「ど、土下座なんてしないでくださいっ…!だっ、大丈夫ですからっ…!」
「でも……」
顔だけを上げた先輩が納得していない声を出した瞬間、体育倉庫の扉が音をたてて開く。
「あーあ、やっぱり使えなかった」
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