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わたわたと躓きそうになりながら、全力で廊下を走る。ずっと寝っ転がってたせいか、体がきしきしと痛い。
だって、速く呼びに行かなきゃ…
池永先輩が傷ついちゃう…
あの時、教室に入ってきたのはいつもと違う雰囲気の真知くんだった。
にやりと笑ってこっちを見た真知くんと瞳を合わせていると、腕を引かれた。
ドンッと扉の外に突き飛ばされた。
池永先輩が逃がしてくれたんだって気づいて、すぐに教室に向かって走った。僕が中に戻ってもできることなんてないから…
息が上がって、じわりと涙が滲んで。
弱い自分が嫌になる。
「っ…!爽乃先輩…!!」
「なっ?!稚佳ちゃん?!」
「稚佳!お前今までどこにいて…どうした…?」
爽乃先輩の袖をぐいっと引っ張る。他の人たちもいっぱいいて、でもそんなこと気づかないくらい焦りまくってて。
「…ッ…池永先輩が…!真知くんに…!」
「池永……?」
「池永って確か…」
「爽ちゃんの親衛隊の…?」
「……実夜…っ」
僕の言葉を聞いて、爽乃先輩は大きく目を見開いた。ゆらゆらと瞳が揺れて、僕が走っていった方に向かって走り出した。
「ぁ…!放送室、です…!」
すごい速さで走っていく背中に向かって大きな声で叫ぶ。
ほっ…と息を吐いた。
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