文化祭一日目(続き)

4/4
589人が本棚に入れています
本棚に追加
/245ページ
わたわたと躓きそうになりながら、全力で廊下を走る。ずっと寝っ転がってたせいか、体がきしきしと痛い。 だって、速く呼びに行かなきゃ… 池永先輩が傷ついちゃう… あの時、教室に入ってきたのはいつもと違う雰囲気の真知くんだった。 にやりと笑ってこっちを見た真知くんと瞳を合わせていると、腕を引かれた。 ドンッと扉の外に突き飛ばされた。 池永先輩が逃がしてくれたんだって気づいて、すぐに教室に向かって走った。僕が中に戻ってもできることなんてないから… 息が上がって、じわりと涙が滲んで。 弱い自分が嫌になる。 「っ…!爽乃先輩…!!」 「なっ?!稚佳ちゃん?!」 「稚佳!お前今までどこにいて…どうした…?」 爽乃先輩の袖をぐいっと引っ張る。他の人たちもいっぱいいて、でもそんなこと気づかないくらい焦りまくってて。 「…ッ…池永先輩が…!真知くんに…!」 「池永……?」 「池永って確か…」 「爽ちゃんの親衛隊の…?」 「……実夜…っ」 僕の言葉を聞いて、爽乃先輩は大きく目を見開いた。ゆらゆらと瞳が揺れて、僕が走っていった方に向かって走り出した。 「ぁ…!放送室、です…!」 すごい速さで走っていく背中に向かって大きな声で叫ぶ。 ほっ…と息を吐いた。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!