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○○にて
目が覚めるとそこには…………
見知らぬ天井がありました。
「……………………っ」
声が、出ない。
と言うか出せない。
ここは……どこだろうか。
起き上がろうとして──体の違和感に気付く。
「…………?」
体を起こせない……うまく力が入らない。その代わりになんだか妙な鈍い感覚だけが全身にある。
なんだ? どういうことだ?
唯一自由に動かせる目で辺りを見回す。
左──白い壁にサイドボード。テレビも辛うじて見える。
右──白いカーテンが天井から下がり、その手前に点滴を提げるアレがある。
あぁ、ここは。
病院だ。
そうだとわかると安心してしまい、力が抜けたらため息が出た。
と、タイミングのいいことに、病室に誰かが入ってきて──顔を見せたのは看護師だった。看護師はベッドのそばに来て私の顔を覗き込んだ。
「……飴屋さん?」
私の名前を呼ぶ看護師と目が合った。
「意識が戻ってる……! せ、先生! 301室の患者さんが……っ!」
慌ただしく駆け出していく看護師。まもなくドクターとともに戻ってきた。そうして一通りの診察を終えると、ドクターが訊いてきた。
「……気分はどうですか?」
そりゃあもう。
天国と地獄に門前払いをされた気分ですって。
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