地獄にて

2/2
前へ
/6ページ
次へ
 ──《汝は神を信じるか》  焦り始めたところで。  声が問う。  天国(の出前)とは違う声。  が、しかし。  天国(の手前)と同じ問い。  ? ここは地獄(の手前)なんだよね?  なら、悪魔を信じるか、になるんじゃないのか?  ──《汝は神を信じるか》  重ねて問われる。  うん? これもまた答えなくてはいけないものなのか。  天国(の手前)で一度答えているせいか、なんとなく面倒臭く感じる。  先ほど答えたのだし、いいのではないかと。  あぁ、でも。  天国(の手前)の時のように何らかの展開があるのだろうか。  それならそれで好都合なのだけれど。  ──《汝は神を信じるか》  考えているうちに三度目の問いが掛かる。  私は答える。 「半信半疑だ」  ──《上がれ。汝が来る場所ではない》  声がいい終えると、私の体が浮き始めた。  足の裏に感じていた立っているという感覚が消える。いま体にあるのは浮遊感。  無重力ってこんな感じなのかな。  なんて呑気に考えていた直後。  ぐんっ! と全身で感じるほど上昇速度が上がり、そのあまりの速さに、私は意識を飛ばした。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加