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お店の一角にあるテーブルスペースに通されると、二人で促されるまま席に着いた。
店員さんは私たちが座るのを見届けると、新しいものをお持ちしますと言って去っていく。
「香取さん! あれは……」
「その質問には答えないよ」
「な、なんでわかるんですか!」
「だってゆりちゃん、そればっかり気にしてる。値段なんか気にしないで、ただ喜んでくれた方が俺は嬉しいんだよ?」
そう言われちゃうと、なにも言えない。
「さっきの、可愛かったでしょ? ゆりちゃん、気に入った顔してた」
彼の嬉しそうな笑顔になにも言えなくなって素直に頷くと、彼は更に微笑みを深くして私の頭を撫でた。
そこに店員さんが戻ってくる。
「この度はありがとうございます。お求めのものは、こちらでよろしいでしょうか?」
「はい」
「包装致しますか?」
「いや、このまま着けていきます」
「かしこまりました。それでは、準備して参ります。お支払は、いかが致しますか?」
「一括でお願いします」
そう言いながら香取さんがカードを差し出した。
「かしこまりました。では」
その時、店員さんが見せた金額が書いてあるタグに目を見張る。
一、十、百、千……ちょっと待って!
誕生日にもらう桁じゃない!
「お願いします」
「かしこまりました。もう少々お待ちくださいませ」
店員さんが優雅に去っていく。
ああ、さすが身のこなしが素敵。
なんて見惚れてしまうけれど、今はそれより大事なことが……
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