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「中川浩二、CRM事業部、神奈川横浜支店所属」
「はい」
あぁ、やっぱり息がしづらい。
なんかドキドキする。
配属が発表されるだけだと言うのに、自分の順番が近づくにつれて心臓の音が少しずつ大きくなっていく。
ただ、返事をするだけ。
ただ、配属を聞くだけ。
でも、入社式の自己紹介よりもよっぽど心臓の音が大きく聞こえる。
「野原陽子、CRM事業部、東京池袋支店所属」
「はい！」
隣に座る陽子の配属先が発表される。
現場だ。
しかも、池袋所属。
壇上に上がり、辞令を受けとる彼女の姿を見つめた。
振り返った陽子が私に目配せをするから、一生懸命笑って応えようとするけれど、そんな余裕が心にないのか私の顔は思うように動いてくれない。
ぴくぴくと口の端が不自然に動く。
壇上から降りた陽子の咳払いが聞こえたと思ったら、すぐに司会者の声が耳に届いた。
「草下ゆり、首都圏営業本部所属」
「っはい！」
驚いて声がひっくり返っちゃった。
隣で陽子が俯きながらプルプル震えている。
壇上までたった５段。
転ばないようにと慎重に上がり、白鳥さんから辞令の紙を受け取る。
意味ありげににやりと笑うその顔を見てから、小さく頭を下げた。
「待ってるって言ったろ？」
小さな声でそう言って、イシシと笑うその人は役員なのか疑わしい。
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