ステップ15 本配属

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「川島広斗、首都圏営業本部所属」 「はい」 広斗は元々希望していた営業になったらしい。 そんなに表情を出すタイプではないけれど、その足取りは軽く嬉しさが滲み出ていた。 辞令を受け取り席に戻ってきた広斗と目を合わせ、辞令の紙を少し挙げてお互いに宜しくと合図する。 「牧野憲吾、首都圏営業本部所属」 「はい!」 「千葉宗一、首都圏営業本部所属」 「はいっ!!!」 宗一の大きな声に会場全体から微かな笑い声が聞こえてくる。 みんなが笑いながら宗一に注目する中、私は宗一の席の隣、凛と座っている南ちゃんに視線を移した。 これで、もし……もしも南ちゃんが……営業になったら。 どうか、神様。 そんなドラマチックな展開はいりません。 人生ってそんなに波乱万丈じゃなくていいと思うんです。 どうか、どうかわたしに平穏を。 いつの間に力が入っていたのか、辞令の紙が手の中でぐしゃりと鈍い音を立てる。 「南野麗子」 ああ、なんだか…… 「首都圏営業部所属」 「はい」 スローモーションみたいだ。
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