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半ば呆然としたまま、手を叩く。
神様、どうか嘘だと言って。
今年の新卒から営業配属の女性はこの二人だけ。
なんでよりにもよって南ちゃんと。
なんでよりにもよって広斗も一緒に。
神様の意地悪だとしか思えない。
呆然と座っていると、横から私の頭を辞令の紙でポンポンと叩く人。
「え?」
「お前はいつまでボケッとしてんだ? 上長が迎えに来てるぞ」
「……うん」
力なく立ち上がり、広斗の後を歩きながら上長の姿を探して会場を見渡した。
すると、陽子が向かった先に背の高いダークグレーの細身のスーツ。
あの素敵な姿かたちは、間違いなく香取さん。
香取さんは九月の辞令で異動し、池袋オフィスのトップになった。
池袋オフィス所属になった陽子やその他の新卒を、アシスタントの女性と迎えに来たらしい。
私に気付いた陽子と香取さんが手を振ってくれる。
その後ろで、会ったことのないアシスタントの女性まで小さく手を振ってくれている。
隣の芝生は青く見えると言うけれど、どう考えても楽しそう。
青く見えるんじゃない。
あんなの、明らかに青いし!
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