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「はぁ……」
「なに溜息ついてんだよ。そんなに香取さんと一緒がいいか。ベッタリだな」
「そういう溜息じゃないよ!」
「甘えすぎると振られるぞ。あの人は女に困らない」
「あ! 痛いところ突かないでよ!」
広斗は時々こうして憎まれ口を叩く。
もしかしたら少しずつ昔のような関係に戻れているのかもしれないけれど、すぐに香取さんに振られるだの、飽きられるだの、意地悪ばかり。
この人は、本当にいい性格をしている。
「川島くん、草下さん、仲がいいな」
その低い落ち着いた声に振り向くと、営業部長の白鳥さんが立っていた。
「白鳥さんお疲れ様です」
「お疲れ様です」
「これから宜しく。期待してるからな」
白鳥さんは壇上の悪戯な微笑みとは違った、穏やかな微笑みを浮かべる。
浅黒い肌に薄茶の瞳、自信ありげなその笑顔に威厳を感じる。
「ほら、上司が待ってるから行ってこい。明日は営業で新人挨拶があるからな」
広斗と二人で再び頭を下げて、それぞれ営業の上司たちがいる席に向かった。
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