身果てるとも玉色褪せず

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私は、まどろみから目を覚ます。 そこには眠りに落ちる前と同じように、淡く光る光景が広がっている。 今は、何も映されていないのだろうか、と思う。 じぃっと空間を眺めていると、浮かんでくるものがあった。 それは、先程私が手を伸ばした玉の色。 心なしか、先ほどよりもよりいっそう美しい色彩に思える。 また触れてみたくなり、手を伸ばそうとして、はたと気づく。 手が動かぬ。視線は動かせるというのに、体は動かせぬ。ぐるりと見やる。 淡い周囲には何もなく、ただ在るものを映すだけ。 其処には今、玉が映っている……美しい龍の玉が。 あぁ、あそこに映っているものは。 あの色彩は――吾が玉。
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