身果てるとも玉色褪せず

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とと様とかか様は私が幼い頃に旅立った。 私は確かに、幼いときはそう信じていたのだ。 死というものが理解できない私に、おばあさまは終わる事のない旅にでたのだと教えてくれた。 おばあさまは私の面倒をよく見てくれた。 身寄りのない私を引取り、村の中だけでなく近くの山々までも連れ出してくれた。 その中でもわたしは神様のお社だ、と教えられた場所が大好きで。山の入り口にあった場所。 そこは神様をお祀りする場所へ続く参道に、百日紅が咲き乱れているのだ。 赤く麗しい花だけではなく、素朴な白い百日紅がときおり混ざっていたのをよく覚えている。 手を引かれながら、わらべうたを歌いあるく幼い私。 おばあさまも小さな声で一緒に歌ってくれて嬉しかった。 引かれる手は小さく枯れた枝のようではあったけれども、力強く感じた。 遊び疲れた帰り道に、空を見上げながら歌っていると、私は不思議なものをみつけて。 「おばあさま、空を。空を見て、何か浮かんでおります」 「おや、どんな形をしてみえるかね?」 「なんだかとても長くて、空いっぱいに広がっています」 「それは鳥のような形をしているかえ?」 「いいえ、滑らかに広がっております そう 蛇みたいに」     
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