身果てるとも玉色褪せず

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「なるほど。だったらそれはたつだろうねぇ」 たつ、とおばあさまの言葉を繰り返す。 「それは、空に浮かんでいるものなのですか」 「そうさねぇ、空にもいるし、水辺にもいるし、土の中にもおわすだろうね」 「それは、そうして何をしているのですか ああして 空に体を浮かべて」 「ここの神さまなら、村を守ってくれているのかもしれないね」 「たつ、は神さまなのですか?」 「そうでもあるし、そうでないときもあるのを、わたしは見たことがあるよ」 若い時は神社の巫女をしていたおばあさまが言う。 「わたしらを、見守ってくださることもあれば――  わたしらがよくないことをしようとしているなら、それ相応のことを呼び込むときもある。  けれども、忌み嫌うものではないんだよ。そうするとしたら、わたしらの勝手な了見だ」 少し難しいおばあさまの話。けれどもたつはとても魅力的に感じられた。 「わたし、たつに触れてみたいです。でも、空に浮いていては届きませんね」 「おまえがよい子にしていたら、降りてきてくれるかもしれないさ」 「まぁ、それはとても楽しみです。たつ様、とっても大きいのでしょうね」 「そうとも限らない。わたしらとおんなじ姿をすることもあるんだよ」     
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