身果てるとも玉色褪せず

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その頃になると、おばあさまは体調を崩して寝込んでいることが多くなった。 それなりに歳をかさねて、ある程度の生きるために必要なことはできるようになっていた。 おばあさまに教えてもらいながら、過ごす時間はとても大切なものだった。 ある日、おばあさまがぐっすりと眠っている間に、村の近くへと薬になる草を取りにでかけて。 見かけるままに摘んでいくと、山の近くへと来ていたのでお参りにいったのだ。 カゴを背に負い歩く山道、道はごつごつとして歩きづらかったけれども、私の心は軽く。 朱に彩られた鳥居は、相も変わらず人気がない。他の村人はあまり近づかない場所だったから。 それでも私にとっては、龍が祀られている神社であり、特別な場所だったから。 祀られている箱に手を合わせ、お参りを済ませて境内に腰掛ける。 幼いときのように、空を眺めては流れ行く雲を想い、たつを描く。 幾度繰り返した頃だろうか、夜の気配が少しずつ広がる空に浮かぶ龍に色がついた。 淡く光る白色をしていたものに、急に色がついて私は目を疑った。 それでも世界は見えているし、たつに色彩は増えてどんどん鮮やかになる。 この時、浮かべている体の中に、何か丸いものが見えた。 それは朝と夜を織り交ぜたような色彩をしていて、吸い込まれるようだった。 狭間の色が、そのたつにはあったのだ。 声も出せず、見惚れる私の前で龍はゆらゆらと体を大空に浮かべて。 ひときわ、その丸いものが輝きを放ち、思わず目を伏せた。 そうして、私が再び空を見上げたときにはもう、龍の姿はなかった。 私の体の中を、頭の中を、得もいわれぬ感情支配して、神社を飛び出し山を降りる。 息を切らしながら祖母の待つ家の中へと転がり込んだ。
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