身果てるとも玉色褪せず

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「おばあさま!今日もたつを見たのです! それも不思議なものをみました」 「おやおや、おまえは元気だねぇ。そんなに慌てて何をみたっていうんだい?」 「丸い……何か丸いものが、たつの中にあったのです! あれはなんでしょう?」 「それは玉だねぇ。おまえはいいものを見せてもらったねぇ」 「ぎょく……あの丸いものはぎょく、なのですか?」 「そうさ、玉は龍の大切なもの……いわば宝物なんだよ」 「まぁ!どうしてたつ様はそれを私に見せてくれたのでしょう」 「それはお前が、美しいからだろうねぇ。たつ様がお前を選んだんだよ」 祖母の細い手が、私の頭を撫でる。 「そうか、お前も選ばれたんだねぇ。そうかそうか……」 「それは、良いことなのですか?」 「そうさね、ひとりきりになるよりはよっぽど良いことだろうね」 「おばあさま、私も、というのは?」 おばあさまは、私のかか様も龍に選ばれたのだと教えてくれた。 「まぁ母様も。なんて、素敵なんでしょう」 「嬉しいかえ、そうかそうか……」 おばあさまは、ただ静かに微笑んでうなづくだけだった。 「おばあさま……おばあさまも、たつを見たことがあるんでしょう?」 「そうさ、でもわたしは選ばれなかったんだよ」 見ることができただけでも、光栄さねと笑う祖母。 微笑む祖母に私は今しがた見てきた光景についてずっと話していた。 夜が更けるまで――
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