身果てるとも玉色褪せず

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身果てるとも玉色褪せず

神が人の形をしているのか。 龍が、神の形をしているのか 神が、龍の形をしているのか。 あの黄昏時に目にした玉の色は、今もまぶたの裏に焼き付いている―― すぅ、と目の前に広がる色彩があった。 その色彩はつるりとした光沢のある輝きをはらんでいて、丸い形をしていた。 それはいつか見たあの玉に形は似ていたけれど、色彩は似て異なるものだった。 あの時みたものは、昼と宵が混ざりあったような凄烈な色合いをしていたのだから。 目の前に広がる玉を見て、私は自分が目を覚ましたことに気がついた。 どうりで、色が美しくみえるものだ。 思わず手を伸ばしてみたくなるようであり、触れがたくも感じる存在感。 上等な甘味といわれればそう思えるし、これは妙薬だと触れ込まれても可笑しくはない。 周囲を見渡すと、何もない。暗闇ではないものの、淡く発光しているような光景。 玉を見てから周囲をみると、色が反射して映るような錯覚。 とても静かで音がない。 時間が流れているのかどうかすら疑いたくなる中、私は玉へと手を伸ばしてみた。 味わってみたかったのだ、どのような質感なのか、冷たいのか熱いのか、軽いのか硬いのか。 玉に触れた刹那、吸い込まれるような感覚を感じて、目を思わず閉じる。 一瞬の暗転の後、発光していた周囲に景色が映し出されていく。 フィルムの物語を映すかのごとく、風景が流れていくゆるやかに、時に重さを持って。 移り変わる風景に見惚れている中、見覚えのある光景があった。 あぁ、あれは確か私がななつになったばかりの頃のできごとだ。 おばあさまに手を引かれてあるいた、百日紅の咲き誇る道すがらの事だったと記憶している。
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