0人が本棚に入れています
本棚に追加
身果てるとも玉色褪せず
神が人の形をしているのか。
龍が、神の形をしているのか
神が、龍の形をしているのか。
あの黄昏時に目にした玉の色は、今もまぶたの裏に焼き付いている――
すぅ、と目の前に広がる色彩があった。
その色彩はつるりとした光沢のある輝きをはらんでいて、丸い形をしていた。
それはいつか見たあの玉に形は似ていたけれど、色彩は似て異なるものだった。
あの時みたものは、昼と宵が混ざりあったような凄烈な色合いをしていたのだから。
目の前に広がる玉を見て、私は自分が目を覚ましたことに気がついた。
どうりで、色が美しくみえるものだ。
思わず手を伸ばしてみたくなるようであり、触れがたくも感じる存在感。
上等な甘味といわれればそう思えるし、これは妙薬だと触れ込まれても可笑しくはない。
周囲を見渡すと、何もない。暗闇ではないものの、淡く発光しているような光景。
玉を見てから周囲をみると、色が反射して映るような錯覚。
とても静かで音がない。
時間が流れているのかどうかすら疑いたくなる中、私は玉へと手を伸ばしてみた。
味わってみたかったのだ、どのような質感なのか、冷たいのか熱いのか、軽いのか硬いのか。
玉に触れた刹那、吸い込まれるような感覚を感じて、目を思わず閉じる。
一瞬の暗転の後、発光していた周囲に景色が映し出されていく。
フィルムの物語を映すかのごとく、風景が流れていくゆるやかに、時に重さを持って。
移り変わる風景に見惚れている中、見覚えのある光景があった。
あぁ、あれは確か私がななつになったばかりの頃のできごとだ。
おばあさまに手を引かれてあるいた、百日紅の咲き誇る道すがらの事だったと記憶している。
最初のコメントを投稿しよう!