ララビアータ

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ララビアータ

彼女ははねっかえりのつっけんどん。 習いたてのヴァイオリンを弾けば、不敵な笑みを浮かべて近づいて来る。 捨てられた仔猫のように。 人間を警戒しながら。 皆、心は萎縮していても、彼女だけは僕らに話しかけてくる。 捨てられた仔猫のように。 人間を警戒しながら。 あの日、彼女は千尋の谷に突き落として、帰ってきた僕らは生まれて初めて自信を得ることができた。 いつまでも、いつまでもこんな日々が続くものだと思っていた。 しかし、あの日僕らは翼を失った。 恋はヴァイオリンを弾くより難しいから。 それでも彼女は話しかけてくる。 捨てられた仔猫のように。 人間を警戒しながら。 彼女ははねっかえりのつっけんどん。 いつも笑顔で話しかけてくる どこかで翼を失っているのに。
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