東北の友

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東北の友

彼はいつもいぎたない言葉でもって私を勇気づけた。 電車の中で 水田の中で 買い物の途中で ぽつんとひとりいる部屋で あれは学生の頃 午後の日差しの中で、串に刺した鮎を頬張り好きなだけビールを味わった。 父を探し、母を探しているうちに友に連れられて来た場所。 今ここは世界の一番端。 ここにもやはり東北の友はいた。 幼い言葉遣いでいつも絶望に立ち向かっている。 いつも世界の隅に追いやられながら、彼は恥ずかしそうに人々の成功を願っていた。 「そいつが願ってることなんて、本当は他愛のねーものなんだ」 そう言って彼はいつもいぎたない言葉でもって私を勇気づける。 電車の中で 水田の中で 買い物の途中で ぽつんとひとりいる部屋で
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