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青年はくるりと向きを変えて颯爽と仁那の方へと歩き出した。その間にも湧いて出てくるバケモノを切って捨てている。「御免」と必ず言葉を添えながら。
刀を閃かせながら近づいてきた青年に、仁那はポールを掴む手に力をこめた。
「誰」
「俺は、む」
青年の背後で起き上がったバケモノの気配に、振り返りざま「御免」と切り捨てる。
流れるように刀を薙ぎ払った青年に気を取られていると、仁那にしがみついている女性が悲鳴をあげた。
砂から這い出たバケモノが立ち上がろうとしている。
やはり人のように見える。頭にかぶっているのはぼろぼろの兜であり、その体に身に着けているのは原型をとどめないほどに引き千切られて紐でようやく繋がっているばかりの鎧だ。
仁那は女性を背にかばいながら、ポールで思い切りその体を打った。
明らかに骨が折れる音がして砂浜に倒れるも、青年のようにバケモノが消えるということはない。
そのバケモノは折れた背骨のせいで起き上がれず、何度も砂の上に崩れ落ちる。機械的に肉体が動くまま繰り返し続ける動きは、滑稽で醜悪だった。
「おなごにしては見事」
ニヤリと豪胆な笑みを浮かべた青年に、仁那は「はあ?」と苛立つように見た。
「余裕ぶってんなら、こいつらなんとかしろよ」
「俺1人では手に余る。道を開くからついてこい」
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