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そう偉そうにいうなり、青年は砂から出てきたバケモノ達を「御免」と切り捨てながら走り始めた。
「ナヨタロー! おばさん、行くよ!」
凛太郎があたふたと砂に足をとられながら仁那の元へ駆けてくる。
仁那は無理に女性を立たせて引っ張り、凛太郎の合流も待たずに青年の後を追いかけた。
「ま、ままま待って、仁那ちゃん! 置いてかないで! 来んな来んな!」
仁那は男か女か分からないような悲鳴をあげる凛太郎に構わず、近づくバケモノをポールで薙ぎ払いながら青年に追いついたその矢先。
青年が激しく咳き込んだ。
夕陽の血を吸ったかのように染まっていた刃先の動きが鈍った。
「ちょっと、何やってんの!? つうかほら、バケモン!」
咳き込んでる場合かと、仁那はのっそりと近づいてくるバケモノの包囲網に必死でポールを突き出す。
青年の咳が激しくなり、その足がついに止まった。そしてついに砂浜に膝をつく。
「ちょっと?!」
ヒューヒューと漏れるような息の合間に、青年は苦しそうに咳をしている。その顔は、悔しさと苦しさとで表情を歪んでいる。
「に、仁那ちゃん、来る来る来る!」
凛太郎が仁那の背中にしがみついた。
「動けねえだろ!」
仁那は凛太郎を突き飛ばすようにして振り払う。
赤黒いバケモノたちの距離はもうあまりもない。
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