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それまでの大人びた表情ではなく拗ねた子供のような顔つきは、仁那たちとあまり変わらない年齢に見えた。
「切れ味とかしらねえっつうの。ナヨタロー、お前ポール使えな?!」
「え、え、えええっ僕? 僕なの?」
「ごちゃこちゃ言ってる暇あんなら手ぇ動かせ! おばさん、しっかりついてきな!」
仁那は刀を構え直し、近づくバケモノを斬りつけるようにして道路に向かって早足であるき始めた。
見よう見まねでしかない刀の扱いは思ったより難しく、下手をすれば自分の足などを切っ先で傷つけかねない。しかもそこそこ重量のあるものを片手で振り続けられるほど鍛えているわけでもない。
仁那の息があがり始めていた。吸いたくもない匂いがよけいに呼吸を鈍らせているせいもある。
背後では凛太郎が悲鳴をあげながら、ポールをやみくもに振り回している。
「あと、少し」
「左だ」
後ろからかかった鋭い青年の声に、仁那はハッと左に刀を振り払う。バケモノが霧散する。
仁那は切れ始めた息を整えるように、深呼吸し、思い通りにならない体と刀への苛立ちをなだめる。
「右。むやみに、振れば、消耗する。指示する」
青年はバケモノが近づく方角を的確に仁那に伝え、仁那はその指示のまま刀を振るった。
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