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「いったあい! なんで仁那ちゃんはいつもそう乱暴なの!」
悲鳴のような声をあげて、凛太郎は砂浜に尻もちをついた。
「さっさとシャワー浴びてこいっつうの。もうたるいし、十分つきあったじゃん。帰る」
「え、あ、待って。待ってよ、シャワー浴びてくるからまだ帰んないで」
凛太郎は慌てて立ち上がると布の切れ端を大切な物のように鞄にいれ、有料のシャワールームへと走り出す。
仁那はシートに後ろ手をつくと、大きく空を仰いでため息をついた。
凛太郎は、お互いの父親が幼馴染のせいで、おむつもとれない頃から一緒に育ってきた相手だ。
だからといって、高校生にもなった男女がなぜ好きでもない相手と海水浴に来なくてはならないのか。
そう文句を言うと、凛太郎はすぐ泣きそうな顔ですぐ拗ねる。
「仁那ちゃあん」
背後から聞こえてきた凛太郎の情けない声に、仁那はまたため息をついた。
「もーなんだよ、うっさいな」
「シャワー使えないみたい」
「ええ?」
「ついさっきまで水が出たのに、急に枯れたみたいに止まっちゃったって」
「じゃーしゃーないじゃん。帰っか」
仁那はイライラするのを隠しもせずに、内股をもじもじさせる凛太郎を見上げた。
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