第一小節 一人で生きる。

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「腰痛も大変ね」 「お年寄りの気持ちよくわかります」 私よりちょっと上のパートさんとこういう会話。病院はどこがいいだの、針、マッサージ、薬や果ては温泉の話にまで発展。 ハ~、相手するのも疲れるのよね。 背中を擦る。 「はい、どうぞ」 ジュースが目の前に出てきた。 ありがとうございます。 副店長、三十歳大学出なんだそうだ。 「だめだ」 立ち上がり、ぐっと腰をそった。 くっくっくっ。 「笑うなー」 「だってー」 「ふん、どうせばばーよ」 「そんなことないですから」 いただいたジュースを飲んだ。 カラン、カチンカチン。 ライターをいじる。 「吸いたかったらどうぞ?」 え?ああー 「遠慮しなくていいよ?」 「タバコ高くて、禁煙中」 「ほー、関心、我慢できなくなったら、熱中できるもの見つけたほうがいいよ」 「ガムとかじゃなくて?」 首を振った。 「負けるって、私は、パソコンで、小説書いたな、一年、夢中で書いて、気が付いたら、すわなくなってた、結構ヘビーでさ、酒もガンガン飲んでたんだけど、そのおかげで全部やめれてたんだ」 「へー、そうなんだ」 禁煙外来も一度行ったが、薬はその一回二週間ぶんだけで最後は飲まなくてもいけた話をした。 「病院もなー」 「わかるけど、やめられないのなら一度行くべし、ありがとう、ごちそうさま」 腰を振りながら、仕事に戻った。 後ろで笑ってるやつに、げんこつの真似をしてやった。 たまに話をするのはこんなこと、まあ社員は移動があるわけだし、新しい社員が来るとこんな話を繰り返すだけ、さてと頑張りますか。 六月も終わり、夏はもうすぐだろうけど、もう暑くて、店の中と外の気温の差に体がついて行かなくなる、それでも、体を冷やさない対策だけは心がけてはいるけれど、下はどうなるかな。 「清水さーん」 「はーい」 それでも時間は過ぎ、年は確実にとるのだから。
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