第一小節 一人で生きる。

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「ヒエー、すごい雨」 朝から降っていた雨は時間を追うごとに強くなっていて、西日本は豪雨災害に注意してという。こっちにも雨雲は流れてくるかな? (よかった―きょう休みじゃなくて) 明日は晴れそうだ、一週間分のことをせねば。 「清水さん、今日悪いんだけど」朝礼で店長に声をかけられた。 「総菜ですね、入ります」 雨の日や天気の悪い時は弁当がよく出る、場所がいいのか悪いのか、コンビニはちょっと遠い、だから忙しいのかな? 「開店しました、弁当出します」 お願いしますの声。 私は作るほうじゃなく、並べるのが専門、売れ行きを見て、判断するのは、総菜部のチーフだけど、指示は私かな。 「すみません」 「はい、いらっしゃいませ」 工事現場の人みたい。 この間、男性に弁当を作っていたようだが頼めるか聞いてきたのだ。 「二つ以上であればおつくりします、配達はしておりませんので、取りに来ていただくようになりますが」 日替わり弁当を五つとのり弁当を二つ、お金をいただき、お名前を聞き、控えを渡した。 電話もいいかと尋ねられ、絶対こられるのであればお受けしますと言ったら笑われ、電話番号と、代表者のお名前を聞いた、何かの時にはこの方へご連絡しますと言って。 「お昼ですね、ありがとうございます」 「すみません」 「はいいらっしゃいませ」 昼までは忙しい。 カウンターには、頼まれた弁当が袋に入って並んでいく、お金はもういただいているから、控えと交換のものがほとんどだ。 「ありがとうございました、ふう」 「清水さん、休憩」 「すみません、行ってきます」 腰をさすりながらバックヤードに入っていく。 あたたたー、休憩所まで持たないときは、階段に腰を掛ける。 おなかの中のものが無くなった体は男性と同じ、筋力をつけないと、背骨や内臓に負担がかかると言われていたが、一度ついたぜい肉は落ちることなくついちゃってるしな。 「お、なにぜい肉引っ張ってるんだ」 「店長―、いじわるだな」 階段をのぼりながらこっちを見て言う人。 彼とは二年目だ。最初は短い時間のパートだったけど、今は一日使ってくれる、ありがたいことだ。
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