第一小節 一人で生きる。

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ありがとうございましたと頭を下げる、かごには飲み物やパンなんかも入っていた、十個もの弁当、住所は、すぐ近く、だからか。 バックヤードに入ると 「あー、あそこのビルか、いろんな会社が入ってるからな、ありがたいよな」 そういうと、名刺を、ホワイトボードに張り付けた、そこには、よく弁当を頼まれる会社個人の住所や連絡先が張り付けてある。 野田佳大、その名刺の名前も気になった、元カレの一人に名前が似ていた。 いや、いやそんなことはないだろう。 そんな思い出もあるよなぁなんて、明日は休み、病院へ行かなきゃな。 行ったら入ったで、検査に、その結果を待つ、朝一で行っても結局昼までかかる。 番号札をもって会計を待つのも時間がかかるしなー。 番号が出て一斉に動く人、薬は一種類だけ、病院から出る、そっちへ行ってくれと言われ、ほかにも出る薬は、近くの薬局へ、処方箋を送ってもらう。 薬は…ドン 「すみません」 「いえ」 「あっ」 でも向こうは、誰だという反応、そりゃそうだ、いつもの恰好は、帽子に、マスクで、目しか見えてないから知るはずがない。 野田さん、こっちは覚えてしまった。 会釈だけして、薬局へ行き、番号の書かれた紙を出した。 「もう、いいのか?」 「後会計だけ」 その声に振り返った。 あ? え? 「成美(なるみ)?」 人違いでーす。 その場を走り駆け抜けようとした。 待てよ! むんずとつかまれた腕。 「痛い!」 「痛いだーハー?クソビッチが、いたいことねえだろ」 「離せ!」 「ここで会ったが、だ、くそ、勝手に引っ越しやがって、なにが思い出ありがとうだ、こっちは」 「こっちは何?結婚したんでしょ、なにがビッチよ、あんただって同じじゃない、それじゃあ」 「待て、結婚てなんだ」 「ハー?結婚するから、私なんかはただの遊びだって言ったのあんたよね」 「まあ、まあ、お前ら、ここ病院」 周りの目、恥ずかしくなった。 「外へ出よう」 「私は話なんかない、さようなら」 ちょっと待て。 離して! 何かがおかしい、ちゃんと話がしたいと言われた、私はない、さよなら。 だって、このまま話をしてどんな展開があるの、つらいなら。
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