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それからも、野田さんは来てるけど、できるだけ接触しないようにした。
お客さんにも名前を覚えてもらえるのは嬉しいけど、あの若い男の子もほとんど毎日来てくれて、冷やかしだろうし。
パソコンを開き、書きかけの小説は、自己満足の物、誰でもいい、共感してくれる人がいてくれる、それだけで書き続けている。
そして、いつしかネームプレートも外した。すぐに出せるようにだけして。
休憩時間、外のダンボール置き場のそばにある、古い椅子に腰かけた。
「清水さん、今度の休みデートしません?」
見上げると、思い切り笑う、本部から来た男性。
前からアプローチはされていたけど、なんかなー面倒くさくて。
「できません」
「そっこー」
「ごめんなさい」
「でもフリーですよね」
「フリー?じゃないもん」
「エー彼氏さんいるんですか?」
「当たり前」
そう、その方が楽だから。
どうせ売り場に戻れば、会う人、出会う人からその話になるのだから。
スマホがなっている、どうぞお構いなく。
電話に出ると、肩手をあげごめんというようにして男性は売り場に戻っていった。
はあ。
「でっかい溜息、ねえ、清水さん本当にフリーじゃないの?」
フェンス越しにこっちを見る、あの子だ。
「おばさんからかって楽しい?」
「おばさんじゃないじゃん、いくつだよ」
「たぶんあんたのお母さんと同い年かもよ」
「冗談、あんなくそばばー、全然違うね」
「くそババ―誰のことだ?」
パコンとヘルメットを叩く音、ちゃんとかぶれと言われている。
「仕事しろ」
ハハハ、怒られてやんの。
頭を下げた、親方と言われた方、最初にお断りを入れた方だ、向こうの方も頭を下げた。
この炎天下、外での仕事は大変だよな。
今度、氷でも出たら上げようかな。
さて、こっちも仕事だ。
売り場に一歩出たらほら来た、副店長。
「彼氏いるの?」
「あのね、いくつだと思ってるの?」
パスんと何かで頭を叩かれた副店長、後ろには店長。
「富永、油売ってんじゃねえ」
「だってー店長」
こんだけいい女に、男の一人二人いないはずがない、早く仕事をしろといわれてやんの。
そーだ、早く仕事しろ。ふん。
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