第一小節 一人で生きる。

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いい女か、ありがとうございます。 トイレに行った時自分が映った鏡を見てため息。 いつからかな、化粧もしなくなった。 汗で流れてしまうし、どうせ隠してしまうから。 いいよな、私汗っかきだし、びしっと化粧できる人って、尊敬しちゃうよな。 昔はしてたけど、必要ないし…あ、脱毛クリーム買わなきゃ。 お疲れ様。 夜十時、やっと帰れる。 かんかんとアパートの階段を上る。カギを開け、しゃがみ込んだ。 「ただいまー、あんたのためだけに、エアコン入れてるんだからね、感謝しろよな」 ぷぷー 誰かが笑った。 玄関前、その男、野田さん?名刺の男がいた。ストーカー? 立ち上がり、すぐに中に入ると扉を閉めた。 ぐっと力が入る。向こう側でもひっぱっているのだ 「警察呼びますよ!」 どうぞという。 「男の一人や二人いるんだろう?」 どこで聞いた! 「んー!」 引っ張るその力に負けそう。 そうだ? 手を離した。 バン! 案の定、座間あみろ、扉を閉める。 ぐっと開いた扉の向こう、鼻を抑え、にらまれた。 「ふん、すーっ、どろ!ふがー」 手で口をふさがれた。 おっきい手。 「うっせーよ、中はいるぞ」 「ふがーふがふが(ふほー侵入)!」 「アンナ―、まあいい、この間はいとこが悪いことをしたすまない」 いとこ?ふーん。 やっと手が離れた。 「だから何ですか?」 前住んでいたところ、なぜ解約したんだという。 「ハー?なんであんたにそんなこと言わなきゃいけないの、自分で借りたのよなにそれ、出て行ってよ」 「自分で借りた?賃貸か?」 「当たり前でしょ!」 「なんであいつウソついて、あいつが買ったんじゃないんだな?」 「あー、そういや、二股、三股かな、かけていた子は違うかもね、そっちに聞きゃいいでしょ、ふん、どうせ俺が買ってやったんだとか大口叩いえたんだろうけど、ウソつき」 ぶつぶつ、聞こえていても関係ねえや。 それじゃあ、と何か言いかけた。
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