第一小節 一人で生きる。

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構え、足を前後に置き、蹴り! 「出ていけ!」 「お、パンツ、白」 足蹴り、を交わされたー?パンツ?ホットパンツだぞ?見えるか? 「くそー」 構えて、付き! はらわれた?なんで―? コウなりゃ。 パシン! 「お、裏拳、スゲー、赤くなった、空手?そうか、ごっちゃになってんだな」 「うるさい、出て行け!」 アソコを蹴り上げようとした。 「うわー、ここはだめだろう。ごめん、じゃね、また明日」 「くんなー!何がまた明日じゃ。次は警察呼ぶからな!」 大声で怒鳴った。 ドアを閉めると怒りがふつふつとこみ上げる。 くそー、こんな体じゃなきゃ、半年も動けなかったんだぞ。 ボス、ボスとクローゼットの中の布団を殴り飛ばした。 「ふー、明日は公園でけりの練習じゃ!ウリ!寝るぞ!その前に風呂!」 それからというもの、店と家に現れ、しかとする日々。 「しーみーずさん、今日のお勧めは?」 「お好きなものどうぞ」 「えー、どれもおいしいからー」 何甘えてるんだこいつは? ―店員さん、ちょっといい? 「はいいらっしゃいませ」 「もうっ」 身長も高くて、見た目ちょっといい男だからか、アルバイトの子たちが騒ぎ出す。 「チーフ、あのお客さん誰?」 「ねえ、あの人と来る男の人たちイケメンなんだけど」 はあ、ここも潮時かな。 「あー、いた」 今度はおこちゃまかよ。田中智也、一応、二十歳だそうだけど、子供にしか見えない。 弁当を渡した、この間は氷ありがとうという。 いえ、いえ、いつも買っていただきありがとうございます。 明るい男の子は、店の中でも愛嬌がよくて、アルバイトの若い子たちと話がはずんでいる。 「ふーん、あんなのがいいんだ」 後ろを振り返るも、あんたには関係ないでしょ、とも言えずにっこり微笑んで、仕事をした。見えてるかどうかわかんないけど!
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