第一小節 一人で生きる。

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 二週間後、カギを開けようとして、背中にふと感じた人の気配に振り向いた。 にた―ッと笑う彼、野田さん。 負けた、家の中には入れない、外で話をしましょうと階段を降り始めようとした。 そこでばったり会った副店長。 「え、あ?」 「何でもないから、はあ、なに?用事?」 明日休みだから宅のみしようと思って。 「飲めないのわかってて持ってきたのか?」 「ノンアル」 暑いしという、真夏、でも、もういい! 「もう!」 なんか変なの、見知らぬ人と、お断りした人を部屋の中に入れるなんて。 何もない部屋を見回す二人、小さな折り畳みテーブルに、冷たいお茶をグラスに入れ置いた。 「まずは、野田さん、私の何が聞きたいんでしょうか、過去ですか?それを聞いてあなたが納得されたいのなら、いとこさんの話だけ聞いて納得なさればいかがですか、私はもう関係ないので」 「あー、そうなのか、納得ねー」 「わかっていただけましたか、どうぞお帰りください」 「帰れ」 副店長のにらむような顔。 「彼氏さん?お店の人だよね」 「違います、上司です若いけど、副店長もお帰りください、私といてもいいことないですから」 「どうしてですか?」 あ、そうか。 「お付き合いしているのも帰ってくるし」 「え?そんな人いたんですか?ずっと見張っていたけどいませんよね、あ、あの若い子、工事現場の子ですか?」 まったくこの人は言わなくてもいいことを 「ウソですか?」 「ハー、そうです、ウソついてました、ごめんなさい、でもデートはできません、それにこういうのも困るんです、おかえりください」 背中がつりそう、いや、つった、いたくて背中をさすった。 「どうして」 「あのですね、いいですか?」 副店長に、お付き合いするということは、それ以上に発展を考えているということになる、私は、病気を抱えていて、そんなのに使う能力はない、休みの日は、病院で一日消えるし、寝ていたい。 「だからわかってください、帰ってください、体が悲鳴を上げてるんです」 「ご、ごめん、でも」 「でもじゃない、ゴメン、仕事辞めたくないんだ、やっと見つけたんだ、お願いします、野田さんもお帰りください、これ以上は本当に困りますから」 「一つだけ、病気は何?」
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