序曲

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カチカチとパソコンのキー叩く音がしている、後ろからのぞいていく人。 “ふーん”と言いながらその場を離れていく。 何か言いたいことがあるなら言えよな。 「洗濯機止まってるぞ」 ウソ、今行くと声をかけ、眼鏡をはずして立ち上がった。  五十五才になった。結婚して二十年、彼と出会って、いや、いや、お付き合いを初めて、二十二年?私の頭も白くなってきた、老眼鏡もかけるようになった。    主人六十七歳、六十五歳まで働いた。彼は、兄弟のために働いた。 私のためじゃなくていいの? んー。いいのかもなー、まだ仕事はしている、好きなことだし、定年はないし、ただ、区切りをつけたかったんだと思う、忙しい事から一線を退いただけだし。うちの親も、彼はちゃんと見てくれてるから。 洗濯機から出したものを持って外へ出た、綺麗な青空。 洗濯物は何人分?と聞かれそうなほどある。 大人のものから子供のものまで、今、一緒に住んでいるのは二家族、六人、そして、住家(すみか)は違うが、学校帰りに内に来る子供たちがプラス五人。 もう、それなりの年になってきた子供たち、でもこうしてきてくれるということはありがたいと思う、そろそろ、恋人や好きな子の話もちらちら聞こえてきている。 二年後の春には、大学生となる甥っ子姪っ子たちが下宿させてと言ってくるに違いない、まあ彼らに言わせれば、都合のいい家政婦がいるくらいにしか思わないのかもしれないけど。 干しながら思い出す、三十代の時の私を。 あの時彼と出会っていなければ、結婚なんて絶対していなかったんだろうなって。 その続きはこれから書き始めるとしよう。 「ただいまー、おなかすいた」 「ナーちゃん、何か食うものある?」 子供たちが帰ってきた。 はいはいと、食事の準備をしに家の中へと入っていった。
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