第一小節 一人で生きる。

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すべて再出発、お金もない、すむところもない、仕事もない。ない、ないづくしの三十歳は三十三歳になった、いい大人。私自身も変わらなきゃなー。 「清水さん、ゴメン、レジいいかな」 「混んでます?」 「うん、お願い」 行きましょうと、年下の副店長の背中を押した。 スーパーの時給金額は安いけど、遅い時間はそれなりにいい値段だ、一人で部屋にいるのが嫌で、なんとなく長く入れるところを選んだ。大手はもういい、小さい、下町にある、小さなチェーン店のスーパーでちょうどいい。 仕事を辞めたとき、あれだけ騒いでいた結婚という二文字は、腫れ物にでも触るように、もう誰も言わなくなって、兄弟たちも、勝手に結婚していって、気が付いた時は子供もいたりして、私だけのけ者?そうじゃない姉ちゃんに遠慮するように、式はしない、しなかったのだという。でもかわいそうで、一番下だけはするように勧めた、お嫁さんがかわいそうだもんね。 実家はつらいものがあった、残った長女に、早く出て行けと言わんばかりの父の態度。 術後の半年は、痛みに耐えた。 そんなもの。 アー、そんなものですよ、仕事もやめて、ぷーたろうです。でももう我慢したくなくて、なけなしの貯金、親に迷惑はかけないと、治療費は自分で出した、保険に入っていてほとんど返ってきたけど、出ていく方が多い。 明るく人当りの言い性格、四人兄弟の長女だから面倒見はいい。周りは、気にせずお見合い、男の話をずかずか勝手に言ってくる。 でも、もう、男はいらない。 恋愛もしない。 三十歳の再出発、老後に備えようと決心した。 母はここにいればいいのにといったが、父親は、下の兄弟のほうをかわいがった、孫をかわいがった。だから子供ができない女はいらないと言われたような気がした。 傷ものか… だからかな。 よしここは。 ありがとうと、お世話になりましたと二人に頭を下げた。もう、親は頼ることはできない。 一人で生きようと決めたのだ。 未来、それより明日。 ひとりでいい・・・ 一人の方が・・・
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