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「ただいまー」
六畳一間のワンルーム、ここが私のお城だ。
タバコもやめた、酒もやめた。
友人は、みんな気を使い始めると疎遠になった。
気を遣う?違うよね、体の話ができなくなったからだ、結婚、男、子供の話もみんなが口に手を当てた、だから、遠慮した。
結婚式の案内はぱったりとやみ、その代わり、年賀はがきにおめでたい話が来る、これもやめようかな。
薬は減ったけど、手放せない、痛み止め。
血液サラサラ、コレステロールを下げる薬、ホルモン剤、これもそろそろ終わる。
卵巣は一個残った、それ以外はすべて取ってしまった、筋腫で圧迫された内臓は瀕死の一歩手前、ここまで戻ったのは奇跡らしいけど、あーあ、何で死んじゃわないのかなー。
おなかに大きく残る傷と、元に戻らないたるんだおなかの肉。
別にもう誰にも見せるわけじゃないから、下半身の手入れなんかしなくなった。スカート履かないし。
「あんまりかな」
よし、明日は、脱毛クリームでも買うか。
その前に剃刀を手にした。
すね毛ぐらい剃っていこう。夏だし、ショートパンツぐらいは履きたいし。
隣からは、犬や猫の声、ペットは禁止じゃないけど、狭いのによく飼うよなと思いつつも、自分も小さな、小さなペットに癒されている。
「ね、うり、おやすみ」
からからと、車を回す音が鳴る、それを子守歌代わりに寝る。
ジャンガリアンハムスターを玄関に置いてきた、一番涼しいところ、今日も通し、朝から最後まで。
「いってきます」
彼の背中にはきれいに一本黒い線が見える、それがまくわ瓜を思い出させた。父親が狭い庭で作っていた野菜、呼ばれ、子供を抱き上げる父は・・・
さーて、仕事、仕事!
おはようございますの声に一日が始まる。
朝礼をして、みんなが持ち場に散らばる。
「清水さんは社員にならないの?」
アルバイトの子が声をかけて来た。
「めんどくさいから、お金もさ、今じゃ保険はくれるから、そんなに変わらないしボーナスも期待出来ないしさ」
「それで、バイトか」
「でもほかは?金回りのいいところあるじゃん」
「めんどくさがりやなんだ、だからこれでいい」
ふーんなんていう学生アルバイト。
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