第一小節 一人で生きる。

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「清水さん悪い、総菜」 「はい」 「大変だね」 「食費浮かせなきゃ」 指でわっかを作る、総菜はいただいて帰れる。 「それいいかも」と笑いながら言う年下のアルバイトたち。 総菜売り場は時間で忙しい、十時半からピークの十二時までと、夕方四時から六時ごろ。そして最後、七時、夜のお弁当、これでラスト。 あとは八時半に残っているものに値引きシールを貼るだけ、でもありがたいかな、ほとんど残らないんだ。 だからほしいものは先にとっておく、へへへ。 午後七時、最後のお弁当を並べ始めた。 「いらっしゃいませ、出来立てのお弁当です、どうぞ」 並べる先から手が出て、持っていかれる。 「うわー、はえー、もうない」 背の高い男性、んー若く見えるけど、同じくらい?学生アルバイトの子たちの目は早い、いい女男はすぐにチェック、確かこの人も、まあ、目を引く容姿ではあるよな。芸能人?誰だろう、んーあーでも漫画に出てくるいい男の代名詞、大きな目に、小さな顔、綺麗な顔つき、ウエーブのかかったちょっと長めの髪、イケ叔父なんだって。 いつも買いに来てくれる、会社なのか、いつも三個以上買ってくれる。 「いらっしゃいませ、日替わりでいいのであれば、おつくりしまよ?」 マスクと深くかぶる帽子で目しか見えないがそれでも笑って対応。 「え、いいんですか?」 「どうぞ、今日は、三食弁当もおすすめですけど」 残ったものを指さす。 「じゃあこれと、日替わり二つお願いできますか?」 少々お待ちください。 中へ入り、おかずを詰めご飯を詰めて、軽くふたをした。 「お待たせしました、ご飯が熱いのでお気を付けください」 ありがとう、助かりましたと、それをかごに入れ持っていかれた。 「すみません」 「はい、いらっしゃいませ」 毎日その繰り返し、新鮮なことも何もない、ただ淡々と毎日を過ごす。 それ以上の事は今入らない。 数日後。 夕方のピークも過ぎ、社員たちが事務所へ上がり帰り始める、残るのは遅番で来た社員数名とレジだけ。 私は、オールマイティーに使ってもらっている。それの一つに、長時間立っているのがつらいから、一時間ちょっとで休憩をいただくことを条件にしてもらった。 朝は、野菜を出し、昼と夕方は総菜、そのほかは、日配と呼ばれる食品の品出し。ピーク時はレジにも入る。 「あたたー」 腰をさする。
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