結婚願望協奏曲-友達以上にはなれません。

序曲

挫折、その意味を知ったのはいつだろうか？
でもそこまで何かに没頭したという事はない、スポーツもしたことはないし、頭もさほどいいわけでもない。やりたいことはあった、でも、それをあきらめなきゃいけないとわかった時だった。
でも、それは挫折ではない。
ただ重ねることで、そう思い込みたい自分がいただけだ。
あきらめ、そう、人生の分岐点で私は逃げた。
目の前にいる人と、ちゃんと向き合えなかった、いや向き合おうとしなかった。
それは私が悪いのだろう。
でもそれだけじゃないと思い込みたいのかもしれない。
時間は待ってくれないように思った。
体がきしむ痛みに耐えきれなかった。

目の前の人と結ばれて、未来を夢見た、この先に結婚という二文字があって、幸せという言葉が持つ残酷さなんて夢にも思わないくらい、有頂天になっていた私がいた。

目の前の人が喜んだのは束の間で、子供ができたと喜んだ。
でもそれは錯覚でしかなかった。

目の前の人が視線をそらした。
ああこれで何もかもやっと終わったと思った。
そして人生までも終わったと思い込んだ。

目の前の人が誤った。
今頃なんで？
今まで翻弄されてきた、やさしい言葉に甘えていた自分が情けなくなった。

そして、目の前の人の前から私は消えた。
自分はここにいるべきではないと気付いたから。

子供ができなければ人間じゃないの？
女じゃないの？
生きてる意味なんかないの？
人の目は耐えられなかった、だから誰にも知られないように生きて行こうと決めたのはだいぶたってからだった。

逃げ道を探して右往左往しているうちにこの年になった。
体は悲鳴を上げているように思えた。
死んだら楽になるのに。

母が・・・泣いた。
父はそっぽを向いて、傷もの、といった。
兄弟は私に遠慮して、そっと恋人と新しい場所へと出て行った。
ああ、私は、もう、女としての幸せは望んじゃいけないんだと、その時悟った。
そう思った。