優しい呪いの使い方

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「ほぉほぉ、(のろ)いかい」  穏やかにうなずいてみせる老主人は、事の重大さをわかっていない。 「陰陽師がお(かみ)に仕えるようになって千年以上。今でも政府の影で陰陽師は暗躍してる。それだけ効力があって怖いものだってことなんだ」 「すごいねぇ」  驚嘆の少しも滲んでいない返答に、玄丸が身を乗り出す。 「ご主人」  怖い顔だ。おそらくバカにされていると感じたのだろう。噛みつきかねない。わたしは彼の腹に手を置いてそれを制する。  そうじゃない。あまりに知られていないことが多すぎるだけなのだ。 「まぁ、効果がどういうものなのかは、あんたがその目で見て確かめな。それより、確認だ。あんた、トラブルを抱えていないかい?」  そう尋ねても、塗り込められたように笑顔を崩さなかった老主人が、次のセリフで初めて眉間に深いヒビを走らせた。 「鳥が関わっている」 「……陰陽道とは、そういうこともわかるのかね」  通りかかる人を幸せに。それだけが理由じゃない。そう改めて知る。
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