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この本屋がまだ営業をしていたとき、昼間、一匹のセキセイインコが店内に迷い込んだ。
すでに閑古鳥の状況で、老主人ひとりしかいなかったし、客に迷惑をかける心配はなかったが、売り物に糞をされたらたまらないと思った。
はたきを持って追いかけ回した。なんとか出入り口に誘導して出ていってもらおうとした。だけど、バサバサと店内を飛び回ったインコは、最終的にガラス窓に悪い当たり方をして死んだ。
「後味は悪かったよ。だが、厄介だったのはそのあとさ。そのインコは、近所のご婦人さんのペットでね。亡骸を処分しようとしたところに現れたんだ。どうも捜していたらしくてね」
「慰謝料でも請求されたかい」
「いや、そこまではなかったけども、嫌がらせをするようになってね。店の前に生ゴミを置いたり、人殺しなんて貼り紙をしたり。旦那さんを先に亡くして独り身で、そのインコを子供みたいにかわいがっていたらしくてね。だったら、うっかり逃げられるなんてヘマしなきゃいいものを」
老主人はイラ立たしげに貧乏ゆすりをしはじめた。
「その頃にはもう店を畳むことは決めていたから、この状況がそのせいだとは言わないがね。それが原因で、人に貸すことを諦めたのは事実さ」
「なるほどね」
「鳥一匹に飛んだ迷惑だ。暗い気分を吹き飛ばしたい。幸せを呼ぶ絵とやらで人を集めて賑やかになれば、例のご婦人だって近寄らなくなるだろう」
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