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 朝陽の中。 赤いどろどろとした液体…ユリの花のように赤いそれを胸から流して、私が街頭に倒れている。  その傍で、透明な涙で頬を濡らし、荘厳な激しくも美しいレクイエムを歌う少年。  光に誘われて、そろそろと扉から現れた街の住人たちが二人を囲む。静かにうつむいて目を閉じて、来夜の音楽を聴く人々。  そんな姿を見下ろしながら。極上の幸せを、感じている。私だけの為の彼の歌。これは、きっと間違いなく夢以外の何物でもない。そして、悪夢では、決してあり得ない。
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