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5.
[『Vie(ヴィ)』p.5]
‡
真夜中。
突然目が覚めた。胸が苦しい。心臓がドキドキする。
裂けるような痛みが、動悸とともに身体中に走る。ひと度ごと、大きくなる。
きっと死ぬのだ。あの眩しい程の光の中のひとときが私の人生の最後の輝きだったのだ。あの幸福な苦しさが、私を殺すのだ。
『アゲハ』
頭の芯で、あの子の声が。ライヤ。
『僕の名前を呼んで。僕の名前がカギになる』
助けて。叫びたいのに声が出ない。
『アゲハ。あなたはこの苦しみから逃れることは出来ない。僕は出来うる限りあなたの痛みを和らげてあげたかったけれども。この急激な苦しみを通過しないことには、あなたはこれ以上大人になれない。だから』
ライヤ、タスケテ。
『せめて僕が、あなたを見ているから。あなたと共にあなたの痛みを受けるから』
胸が、破れるよ。もう。
『僕の名前を呼んで。大きな声で』
「ア・・・」
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