目覚めるとそこには・・?・!!

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目覚めるとそこには・・?・!!

娘とピッピが愛を育むようになってから、1か月が経つ頃、常に娘の手に握られている108円の玩具は、色もくすみ、ボロボロと皮膚が剥がれ、目と口についていた色がすっかり取れて、のっぺらぼうになっていた。 何よりも気になるのは首に出来た亀裂で、今にもポッキッと折れてしまいそうだ。 このままにしていては、娘の前で無残な姿になり、幼い脳裏に衝撃的な記憶を植え付けることになる。 私は、娘が見ていない隙に同じ物を100円ショップで購入し、娘が熟睡すると握られた手をそっと開き新しいヒヨコにすり替えた。 これで安心して眠れる。 久しぶりに深い眠りについた私は、翌朝娘の叫び声で目覚めた。 そこには、涙をボロボロ流す娘がいた。 「ちがーう! ちがーう!」 目覚めた私に必死で訴える娘の指す方向を見ると、昨晩握らせたヒヨコが落ちている。 幼いくせに、鋭い。 しかし、ピッピはすでにごみ箱の中。 この日、私を敵視した娘と過ごした1日はまるで地獄のようだった。 鬼と化した娘を寝かしつけ、ようやく地獄から解放され、久しぶりに旦那と晩酌をした。 ストロング缶5本、自分の分を全部飲み干すと、仏壇に備えたビールをイッキに飲み干した。 「ボロボロの玩具を新品の玩具に変えてあげたことの何が悪いっていうのよ!」 自分の大声で我に返った。 娘の寝顔を覗き込むと、天使の寝息をたてて眠っている。 死んだ旦那にくだを巻く、酔っ払いの中年女…そんな残念な自分に気づき、虚しい一人飲みをやめ、娘の眠る布団に入ろうとすると、仏壇から聞こえるはずのない声が聞こえてきた。 それは深酒による幻聴。 しかし、その声は鮮明であり、いつまでも耳に残る。 「純粋な娘を騙したお前が悪い。 今回だけは、ウソを真実にしてやるから、もうするなよ!」 懐かしい音に引き寄せられ、気づくと仏壇の前に立って、旦那の写真を見つめていた。これもまた、酒が見せた幻覚か旦那の表情はいつもより鋭い。 私はそのまま、仏壇の前で眠ってしまった。
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