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+傍に居て+
―置いていかないで
辺り一面の闇
そこは、昔居たアノ場所によく似ていて‥
遠くにはあの人
手を伸ばしても、届かない
―ねぇ、待って!!
置いていかないで!!
―……っ!!!
「…!!!」
目の前には見慣れた天井。それが、悪夢から解放されたことを悟らせる。
傍らのベッドには三蔵が、静かに寝息を立てながら眠っている。
「…ははっ、どうしちゃったんだろ?俺…」
久しぶりにあんな夢を見た。
暗くて静かで、自分以外何もない世界。
手を伸ばしても何も掴めない、冷たい世界…。
「今はもう、あそこじゃないのにな…。」
無意識に震えがくる。自らの手で目を覆いながらかたく瞑る。
涙が流れないように。
「ん…悟空?」
「…!!…さんぞー?ごめん、起こしちゃった?」
少し焦りながらも、何事もなかったように返事を返し、月を見上げた。
上を向いていないと涙が零れてしまいそうで。
「ぃや、、どうした?眠れないのか?」
「んーん、ちょっと目が覚めただけだよ?」
「そうか……?悟空、こっち向け」
向かない。向けれない。
絶対に見られてしまう。表情を見たら、聡い三蔵ならわかってしまう。
「…なんで?月、綺麗じゃ…!!」
何時の間にか近づいてきていた三蔵に後ろから抱きすくめられた。
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