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+宣戦布告+
いつもと同じ、ある秋の昼下がり。
俺は執務室で書類を片付けていた。
普段通り、悟空も外で遊んでいる。
窓からそんな様子を見ながらほくそ笑んでいた。
ふと目を離した隙に、先程まで見えていた悟空の姿が消えていた。
と、同時に騒がしい足音がこちらに向かってくる。
あと少し…
―ばたばたばたっ
「さんぞー!!!!!」
《スパアァンッ》
「うるせぇ!!静かに入ってこれねぇのか!?」
「いってぇ!!!」
ぅ~と唸りながら頭を抑え蹲る悟空。
少し強かったか?;;
「…で、どうしたんだ?」
少し懸念しながらも話を戻す。
するとガバッと起き上がりながら目をキラキラさせて、ポケットをまさぐっている。
「これっ!」
暫らくして何かを両手いっぱいに掴んで引っ張りだす。
手には沢山のどんぐりが握られていた。
「それ、そんなに沢山どうしたんだ?」
「裏庭の木がなっ、俺の為に落としてくれたんだっ!」
「木が…?」
「おぅ!他にもな、栗とか木の実を色々落としてくれたんだぜ♪」
「そうか…よかったな」
「うん!」
*****
それから暫らくの間、毎日のように悟空が木の実やらどんぐりやらを沢山抱えて帰ってきた。
しかし、冬が近付き少し寒くなった頃にソレはぱたりと止んだ。
もうこの時期だ、もう木の実も殆ど残ってねぇんだろうな…
そんな事を考えながら悟空を待っていた。
しかし、もうじき日が沈むであろう時間になっても帰ってこない。
あのバカ猿が…どこ行きやがった…(怒)
何故だかイライラする。
それと同時に嫌な予感がする。
ガタッと音を立て立ち上がる。
「三蔵様?」
「……」
すたすたと無言で部屋を出ようとする。
「ちょ、三蔵様!?何処へ行かれるんですか!!?」
「チッ…あのバカ猿探してくる。」
「では誰か…」
「一人で良い。」
「しかし…!!」
―パタン
呼び止める声も聞かずに扉を閉めた。
どうせ居る場所はわかっている。
「でな、悟浄がヘマしてさんぞーに銃乱射されてやんの♪んで八戒が…」
……やはり、此処か。
「悟く…」
―ザァァアア
風が、木の葉が
悟空と俺の間に吹き荒れた。
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